散文
27さい囲碁女蕎麦ひとりヨル
2023.04.10
好きな蕎麦屋の改修工事が終わったので、帰りに寄れる日常が再開。
"お気に入りの蕎麦屋"なんて存在ができると思わなかったけど(なんか生意気じゃん)わたしにもお気に入りの蕎麦屋ができた(生意気にスミマセン)。
この散文が公開される今日、私は27歳になる。
ふぅ~
27歳いい年齢だねえ~
いかすぅ~
もう27歳にもなると「そんなに若いのに!」とか「史上最年少」とかとは全くご縁がなくなった。
"新人"という肩書きが一つなくなりつつあることが誇らしくも心許ない。そわそわ。
ここまできて、ようやっと「これからは、一人でしっかり大地を踏み締めていくぜ!」という気持ちになった。
とはいえ心の奥底は果てしなくお子様なので、お子様と決別することはなく、私らしく楽しく生きていこうと思う。
27歳を目前にして、私のお気に入りのお蕎麦屋さんの改修工事がすっかり終わった。
中に入ってみると正直「どこ直したんだろう」というくらい何も変わらないのだが、1ヶ月ちょっと閉店しての改修工事なのだからきっと何か大掛かりな部分の改修が行われたはずなのである。
でも居心地もインテリアも、何も変わった様子はない。蕎麦もうまい。
天ぷらもうまい。相変わらずうまい。
人は優しいが程よくほっといてくれるのもこのお店のいいところだ。
改修前も改修後の今も、客層はなんだかエンタメ関係の人が多そうなところも変わらない。
何が変わったのかとぼんやり考えながら、ケータイで囲碁を打つ。
最近照井春佳ちゃんにお誘いいただいて囲碁をやり始めた。
お恥ずかしながらまだ『ヒカルの碁』は読んでいないのだが、読んでなくても囲碁は楽しい。
それを日本棋院の先生に話したら「だったら『ヒカルの碁』読んだらもう囲碁からは逃れられなくなりますねぇ」と言われた。
『ヒカルの碁』
…一体どんなに面白いんだ。
読みたい読みたいと思いつつ、まだ読めていない私がいる。今はまだこのよちよち歩きを楽しもう。
そうそうそれで、蕎麦食べながらケータイで囲碁を打っていたらお店の方に珍しく「囲碁いいですね」と話しかけられた。
注文の時以外で話しかけられたのは初めてだった。
「囲碁、いいですよね。」
「あ、はい。なんか無心になります」
「ぁあ、そんな感じだった気がします。ルールおぼえてるかなぁ。やりたいな」
嬉しかったから誘ってみた。
「やりましょうよ」
「え、やろうかな。アプリですか?」
乗ってきてくれた。
「アプリです。日本棋院が出してるやつで、ルールはこれでほとんど覚えました。」
「えーよさそう。私もそれやったら思い出しできますかね」
「できますできます。めちゃくちゃポップでわかりやすいです。」
「ダウンロードします。あ、蕎麦湯飲みますか?」
「おすすめです。飲みます。」
そして蕎麦湯を入れてもらった。
囲碁の対局は途中で話しかけられるとほぼ負けるので、その時も例外なく負けたけど、なんだか心は勝っていた。
お会計を頼んだ時にふと思い出して
「そういえば、何を改修してたんですか」と聞いてみた。なかなかこんなふうに話しやすい感じになるのは珍しいので、思い切って切り出してみた。
すると彼女はハハっと笑って
「そうですよね、全然雰囲気変ってないですよね」と、私に寄り添ってくれた後「休んだ理由は水道管周りの工事です。併せてキッチンの大物をちょこちょこ新しくしました。あ、電球も変えましたけど」と教えてくれた。
なるほどそれはわからないわけだ。
見てもわからないけど、主役となる料理には大きく影響する部分をしっかり整え直したということらしい。
見えないところも整え続けるから、ずっと美味しいお蕎麦なんだな。
27歳を目前に、お気に入りの蕎麦屋がしっかり仕事環境を整えているというこの事実に、私はなんだか背筋をシャンとさせられた。
わたしも美味しいお蕎麦を、いい作品を、提供できる人でありたい。
今日、あのお蕎麦を食べれてよかった。
今日もお蕎麦は美味しかった。
燦々たる日々爛漫に明日も良い日になりますように
27歳もどうぞよろしくお願いします