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散文

唸り明かした朝

2023.08.28

『A子さんの恋人』を初めて読んだ。
これは留学先のニューヨークから帰国した"A子"を中心に、大人でいるようで大人になりきれない美大卒のとある男女の日常を描いた群像劇である。
『ニューヨークで考え中』の近藤聡乃の代表作です。

多分世間的には『A子さん~』の方が知られているのだろうけど、わたしは大学時代だったか、三茶に住んでいた頃に、駅の上のTSUTAYAで『ニューヨークで考え中』に出会ったのが最初なので、私にとっては『ニューヨーク~』の近藤さん。
こういうのってたまにありますよね、私もお手軽でそのような言葉を賜ることがあります。
「みんなにとっては"みりあちゃん"だけど私にとっては"一般人ちゃん"なんです」とか。

巡り合うタイミングによって、代表作は変わっていく。まあ、世界は一人称的ですから、そういうものなのだなと思います。
何が良いとか悪いとかではなく、そういうものだよなと思ったので、書き残します。

あ。

例えばものすごーく意地悪だと思ってた人が、10年後にはものすごーく謙虚で臆病になっていたりする時も。
私からしたら、過去に基準を置いてしまうから

「丸くなったなぁ。なにかたいへんなことでもあったのだろうか」

だけど、その人の最近の知り合いからしたら

「本来はこんなに素敵なのに、昔は苦労されたんですね」

ってなるんだろうな。
どっちが本当かなんて第三者の主観で簡単に変わっちゃう。



いやいやそんな話がしたかったのではなくて。
この『A子さんの恋人』、たびたび人におすすめされていたのですがなんとなく読み損ねていて、ようやく読みました。
夏風邪をこじらせたおかげで家にいるしかなくなったので、微睡の中でトロトロとページをめくります。

「最後の3巻分がよいよ」

と聞いていたのでなんとなく頭の片隅に置いていたからかも知れませんが、たしかに。
最後の3巻、いや、特に、6巻の展開はもうたまらなくて。「きっとこうだろうな」と「もしかしてこうなっちゃうの!?」のハラハラとドキドキを繰り返し、耳の奥がきゅーっとなったところで、最終巻がスタート。最後まで大満足の食べ応え、いや、読み応えでした。


絵のテイストも個性的なので、好みが分かれる作品ではありますが、是非一度、読んでいただけたらと思います。
後半はもう、たまらんですよ。


燦々たる日々爛漫に
明日もよい日になりますように

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