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散文

ばんざいエビチリ

2024.10.28

海鮮にハマっている。 
スーパーへ行けば鮮魚コーナーを舐め回すように見てしまうし、ランチで選べる時はお魚を選ぶ。 
兎にも角にも魚介がよくて、そこに理由を明文化できず、どうやら本能で海鮮を求めているらしかった。 

大好きな友人との久しぶりのランチは中華を選んだ。 
友人が提案してくれたレストランの選択肢の中にずっと気になってピン留めしていたレストランがあったので、そこに。 
今までわたしにとって中華といえば、麻婆豆腐一択で。(気分によっては餃子もあり) 
中華を食べに行って海鮮を食べたいと思ったことってなかったと思うんですけど、やはり今は海鮮が食べたいようで、選んだのはエビチリが食べれるコース。 
正直ちょっとお高くて。 
エビチリじゃなくてもいいのでは、と良心と戦ったのだけれど、コースの中にはホタテや蟹など、他にも魅力的な言葉が連なってしまっていて、旨味の予感には抗えませんでした。 

そしていざ目の前に現れたエビチリさま。 

握り拳ひとつ分程も大きいエビが2尾使われたジューシーなエビチリは、私たちのマシンガントークすらぎゅっと押し退ける美味しさで。 
半ば重なるように喋り続けていた私たちの会話がエビチリ様の旨みに押しつぶされ、はじめての静寂。 
咥内には旨みが広がり、聞こえるのは海老が弾ける咀嚼音だけ。 
甘味と酸味と辛味のバランスが絶妙で、コクが深いソースに絆されて、添えられた蒸しパンもあっという間になくなってしまった。 


満腹になってからも容赦なく続く素晴らしい皿の数々に完敗。 
丸々と膨らんだ腹を抱えて歩くラグジュアリーホテルは、少し恥ずかしかったです。 


とはいえ、ホテルの中のレストランは背筋が伸びて、食事が楽しい。 

こういうレストランに緊張せずに行けるようになったのはいつからでしょう。 
昔は食べることより場の空気に圧倒されて、味わうこともできずに疲れて帰っていたように思うんです。 

どんなに特別なときでも、いや、特別な時こそ、好きなタイミングでお手洗いに立てるくらいのカジュアルなレストランの方が食事を満喫できて良いと信じてやまなかった。
でも、いまはちょっとだけ違う感覚。 
大人になった、ということでしょうか。 
背筋が伸びるようなところに行けば、その分しっかりと味や会話に没入できるし、安心して食を楽しめるような気がするんです。 
圧倒的にもてなされている気分、といいますか。 
極上の演劇を観る時と同じような高揚感と多幸感に包まれて、どこか違う場所へと飛ばされるような。そんな感覚。 


素晴らしい空間と最高の食事に支えられて、とても幸せな再会を果たすことができました。 
料理って素晴らしい。 
かなわないかもしれない。 
でも、エンタメでだってできるかもしれない。 
それがどんな形かわからないけど、こんなふうに誰かと誰かの再会を支えられるような、そんな作品に携わっていけるように、これからも頑張っていきたいです。 

 


燦々たる日々爛漫に 
明日もよい日になりますように


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